FUJINON XF90mmF2 R LM WR レンズレビュー:卓越した描写と高速AFを兼ね備えたポートレートの傑作
富士フイルムXマウントシステムにおいて、数々の高品位な単焦点レンズがラインナップされていますが、その中でも特に描写性能とAF速度において高い評価を得ているのが「FUJINON XF90mmF2 R LM WR」です。本レンズは、APS-Cフォーマットに最適化された中望遠単焦点レンズとして、その優れた光学性能と堅牢なビルドクオリティにより、多くの写真家から厚い信頼を寄せられています。
焦点距離90mmは、35mm判換算で約135mm相当の画角となり、ポートレート撮影において被写体との適度な距離感を保ちながら、背景を美しく整理できる理想的な画角を提供します。開放F値2.0という明るさは、暗い環境下での撮影を可能にするだけでなく、被写体を際立たせる大きなボケ味を生み出す上で非常に重要な要素となります。
圧倒的なシャープネスと解像感
XF90mmF2 R LM WRの最大の魅力の一つは、その圧倒的なシャープネスと解像感です。レンズ構成は8群11枚とされており、その中に3枚のED(特殊低分散)レンズが惜しみなく投入されています。これにより、色収差が徹底的に抑制され、開放F値2.0から画面中央から周辺部に至るまで、非常に高いコントラストと鮮明なディテールを再現します。被写体のまつげ一本一本や髪の毛の質感まで克明に描写する能力は、特にポートレートやスタジオ撮影において、その真価を発揮します。風景撮影においても、遠景の細かい描写までクリアに捉えることができ、撮影者の意図を忠実に反映した画像が得られるでしょう。
美しいボケ味
F値2.0の明るさと相まって、このレンズが生み出すボケ味は「とろけるように美しい」と評されることがよくあります。7枚の絞り羽根は円形絞りを採用しており、点光源が描かれる場面でも自然で滑らかな円形のボケを表現します。ポートレート撮影では、被写体を際立たせ、背景を自然かつ幻想的にぼかすことで、主題への視線誘導を効果的に行います。また、最短撮影距離は0.60m、最大撮影倍率は0.30倍と、被写体にある程度寄ることが可能で、テーブルフォトやクローズアップ撮影においても、その美しいボケと描写力は魅力的です。
高速・高精度なオートフォーカス
本レンズは、4つのリニアモーターを搭載した「クアッドリニアモーター」駆動方式を採用しています。これにより、非常に高速かつ静粛、そして高精度なオートフォーカスを実現しています。内部合焦方式のため、フォーカシング時にレンズの全長が変化せず、重心の変動が少ない点も特筆すべきです。この高速AF性能は、動きの速い被写体を追従するスポーツ撮影や、予測不能な動きをする子供の撮影などにおいても、決定的な瞬間を逃さない信頼性を提供します。ミラーレスカメラの進化と相まって、XF90mmF2 R LM WRのAF性能は、撮影体験を格段に向上させる要素と言えるでしょう。
堅牢なビルドクオリティと実用性
レンズ鏡筒は、高い品質感を持つ金属製で、手触りも良く、所有する喜びを感じさせます。さらに、「WR(Weather Resistant)」の称号が示す通り、防塵・防滴・-10℃の耐低温設計が施されています。これにより、小雨の中や埃の舞う環境、寒冷地といった厳しい撮影条件下でも安心して使用することができます。プロの現場での使用にも耐えうる堅牢性は、屋外でのポートレート撮影やネイチャーフォトなど、様々なシーンでの活躍を期待させます。フィルター径は62mmで、汎用性の高いサイズです。重量は540gと、Xシリーズのカメラボディとのバランスも良く、手持ち撮影での安定感も確保されています。
用途ごとの優れた性能
ポートレート撮影
XF90mmF2 R LM WRは、その焦点距離、開放F値、そしてボケ味の美しさから、ポートレート撮影において最高の選択肢の一つとされています。被写体を鮮明に描写しつつ、背景を効果的にぼかすことで、情感豊かなポートレートを生み出します。
望遠撮影
35mm判換算135mm相当の画角は、遠くの被写体を引き寄せたり、特定の要素を切り取って強調したりする望遠的な使い方が可能です。風景の一部を切り取る風景撮影や、イベント会場でのスナップ撮影などにも適しています。
低光量下での撮影
開放F2.0の明るさは、薄暗い室内や夕暮れ時、夜間の撮影において、ISO感度を過度に上げることなく、手ブレや被写体ブレを抑えた撮影を可能にします。これにより、ノイズの少ないクリアな画像が得られます。
スポーツ撮影
クアッドリニアモーターによる高速かつ正確なAFは、動きの激しいスポーツシーンでの撮影において威力を発揮します。被写体の素早い動きにも追従し、決定的な瞬間を捉えることができます。
考慮すべき点
XF90mmF2 R LM WRは、多くの優れた特性を持つ一方で、いくつかの考慮点も存在します。一つは、光学式手ブレ補正機構(OIS)を搭載していない点です。望遠域のレンズとしては、手ブレ補正がないことを懸念する声もありますが、明るいF値やカメラボディ内手ブレ補正機能(IBIS)を搭載したモデルとの組み合わせ、あるいは適切なシャッタースピードの選択により、その影響は軽減可能です。また、単焦点レンズであるため、ズームレンズのような画角の柔軟性はありませんが、それは画質へのこだわりと引き換えであり、多くの写真家はそのトレードオフを受け入れています。
総評
FUJINON XF90mmF2 R LM WRは、富士フイルムXシステムユーザーにとって、特にポートレート撮影を重視する方、そして最高の描写性能を求める方にとって、間違いなく所有する価値のある一本です。卓越したシャープネスと美しいボケ味、そして高速・高精度なAFは、撮影者のクリエイティブな表現を力強くサポートします。防塵防滴耐低温設計による堅牢性も相まって、様々なシチュエーションで頼りになる存在となるでしょう。手ブレ補正機能の非搭載は唯一の懸念点かもしれませんが、本レンズが提供する全体的な性能と体験は、それを補って余りあるものです。このレンズは、写真作品の質を一段と高めたいと願う写真家にとって、真の傑作と言えるでしょう。
