ニコン NIKKOR Z 24-120mm f/4 S レンズ レビュー
はじめに
NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sは、ニコンZマウントシステム向けに設計された、汎用性の高い標準ズームレンズです。フルサイズ(FXフォーマット)に対応し、広角24mmから望遠120mmまでをF4の一定開口部でカバーすることで、多様な撮影シーンに対応します。S-Lineレンズとして、優れた光学性能と実用的な機能を両立しており、その高い評価はZシステムユーザーの間で広く知られています。本レビューでは、このレンズがどのようなシーンで真価を発揮するのか、その性能と特徴を詳しく掘り下げていきます。
光学性能:S-Lineの卓越性
S-Lineに属する本レンズは、ニコンの高い光学技術を結集した優れた性能を誇ります。13群16枚のレンズ構成には、ED(特殊低分散)レンズや非球面レンズが効果的に配置されており、色収差や歪曲収差を良好に補正します。これにより、広角端から望遠端まで、画面全域にわたって高い解像度とコントラストを実現しています。
ニコン独自のナノクリスタルコートが採用されている点も特筆すべきです。これにより、フレアやゴーストが効果的に低減され、逆光のような厳しい照明条件下でも、クリアで抜けの良い描写が得られます。また、レンズ前面にはフッ素コートが施されており、撥水・撥油性能が高く、汚れが付着しにくいため、アウトドアでの使用やメンテナンスの容易さに貢献しています。
開放F値4の描写も非常にシャープであり、特に中央部においては開放から高い解像力を発揮します。絞り込むことでさらに画質は向上しますが、F4でも十分実用的な画質を提供し、風景撮影などでの細部の描写力は目を見張るものがあります。
オートフォーカス性能と操作性
オートフォーカスシステムには、静かで高精度なステッピングモーター(STM)が採用されています。これにより、静止画撮影においては高速かつ正確なピント合わせが可能で、動きの速い被写体でもしっかりと捉えることができます。また、動画撮影時においても、STMの特性を活かした滑らかなフォーカス駆動と静粛性は、映像クリエイターにとって大きなメリットとなるでしょう。フォーカスブリージングも効果的に抑制されており、ピント位置の変化に伴う画角変動が少ないため、よりプロフェッショナルな動画制作に適しています。
内部合焦方式(IF)を採用しているため、フォーカシング時にレンズの全長が変わることがなく、レンズ全体のバランスが保たれます。これにより、ジンバルを使った動画撮影などでも安定した運用が可能です。
操作性に関しては、Zシリーズの多くのS-Lineレンズと同様に、カスタマイズ可能なコントロールリングを搭載しています。このリングには、絞り値、ISO感度、露出補正などを割り当てることができ、撮影スタイルに合わせて直感的な操作が可能です。クリック感のないスムーズな操作は、動画撮影時の絞り調整などにも最適です。
携帯性と信頼性
約630gという比較的軽量な設計でありながら、堅牢な造りが特徴です。Zマウントのフルサイズ対応標準ズームレンズとしては、非常にバランスの取れた重量と言えるでしょう。この軽さは、長時間の持ち運びや手持ち撮影の負担を軽減し、旅行やイベントなどでの機動性を高めます。
また、防塵防滴に配慮した設計が施されており、レンズ内部への水滴や塵の侵入を防ぎます。これにより、急な悪天候下での撮影や、砂埃の多い環境でも安心して使用できる高い信頼性を提供します。フィルター径は77mmで、多くの一般的なフィルターと共有できる点も利便性が高いです。
最適な使用シーン
このレンズが特に真価を発揮するシーンは多岐にわたります。
- 旅行・汎用撮影: 広角24mmから望遠120mmまでをカバーする焦点距離と軽量設計は、旅行での一本用レンズとして最適です。広大な風景から街角のスナップ、ポートレートまで、これ一本で対応できる汎用性の高さは、旅の荷物を減らしたいユーザーにとって大きな魅力です。
- 風景写真: 24mmの広角端は壮大な風景を捉えるのに十分であり、S-Lineレンズらしい高い解像度が細部までシャープに描写します。開放F値から優れた性能を発揮するため、三脚に固定してじっくりと作品を制作する際にも力を発揮します。
- イベント・スナップ: F4の一定開口部と強力な手ブレ補正機能(VR)により、屋内外のイベントで安定した性能を発揮します。素早いAFも動きの速い被写体を捉えるのに役立ち、決定的な瞬間を逃しません。
- ポートレート: 120mmの望遠端とF4の開口部は、適度な背景ボケを生成し、被写体を際立たせた自然なポートレート撮影に適しています。35cmの最短撮影距離と0.39倍の最大撮影倍率により、被写体に接近した撮影も可能で、花のクローズアップなどにも活用できます。
- 動画制作: 静かでスムーズなSTMによるAF、フォーカスブリージング抑制、効果的な手ブレ補正は、高品質な動画コンテンツ制作にも大きく貢献します。幅広いズーム域は、物語性のある映像表現にも柔軟に対応します。
考慮点
F4という最大開口部は、F2.8通しのズームレンズや単焦点レンズに比べて、非常に暗い室内や、背景を極端に大きくぼかしたい場合に物足りなさを感じるかもしれません。しかし、その分、レンズのサイズと重量が抑えられ、価格もリーズナブルに設定されています。これは性能と携帯性、価格のバランスを考慮した上で、多くのユーザーにとって最適な選択肢となり得るトレードオフです。また、厳密なマクロ撮影には向きませんが、0.39倍という最大撮影倍率は、一般的なクローズアップ撮影には十分な性能を提供します。
結論
NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sは、ニコンZユーザーにとって非常に魅力的な「万能レンズ」です。広角から中望遠までの幅広い焦点距離、一定F4の明るさ、そして優れた光学性能を、比較的コンパクトで軽量なボディに凝縮しています。防塵防滴やフッ素コートといった実用性の高い機能も充実しており、様々な環境で安心して使用できる信頼性があります。
一本で多くのシーンをカバーしたい旅行写真家、風景愛好家、イベントスナップ、ポートレート、そして動画クリエイターなど、幅広いユーザー層におすすめできます。性能、携帯性、価格のバランスが非常に良く、Zシステムを最大限に活用するための「定番」とも言える一本となるでしょう。このレンズは、多くのユーザーにとってZシステム体験を向上させるための賢明な投資となるはずです。
