NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズ レビュー
ニコンZマウントシステム向けに登場したNIKKOR Z 70-180mm f/2.8は、その汎用性、高速な開放F値2.8、そして比較的軽量コンパクトな設計が特徴の望遠ズームレンズです。このレンズは、プロフェッショナルから熱心なアマチュアまで、幅広いユーザーの要望に応えるべく開発されました。本レビューでは、本レンズの光学性能、機能性、操作性、そして特に活躍が期待される使用シーンについて、客観的な視点から詳細に評価します。
光学性能と描写
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8は、15群19枚のレンズ構成を採用しており、ズーム全域で優れた描写性能を発揮します。開放F値2.8から高いシャープネスと解像度を実現し、特に中心部では細部のディテールが際立ちます。ズームレンズでありながら、色収差や歪曲収差も適切に補正されており、色のにじみが少なく、自然な色再現が可能です。
特筆すべきは、9枚羽根の円形絞りによる美しいボケ味です。開放F値2.8は、被写体を背景から際立たせるための十分な分離感を提供し、ポートレートや低照度環境での撮影において、柔らかく滑らかな背景描写を実現します。望遠端の180mmでのF2.8は、特に印象的なボケを生み出し、被写界深度の浅さを活かした表現に貢献します。
また、最短撮影距離0.27m、最大撮影倍率0.48倍という優れた近接撮影能力は、このレンズの大きな魅力の一つです。望遠ズームレンズとしては異例の高倍率で、花や昆虫、小物のディテールを捉える準マクロ撮影にも対応します。これにより、単なる望遠レンズにとどまらない、より多様な表現の可能性が広がります。
機能性と操作性
このレンズの最大の特徴は、ズーム全域でF2.8の明るさを維持する定常開放F値です。これにより、ズーム操作を行っても露出が変化せず、低照度下での撮影や、高速シャッターを必要とするシーンにおいて、安定した撮影を可能にします。
オートフォーカスシステムには、静かで高速なステッピングモーター(STM)が採用されています。これにより、静止画撮影における被写体の迅速な捕捉はもちろん、動画撮影時においても滑らかで静かなフォーカシングを実現し、音声への影響を最小限に抑えます。インナーフォーカス方式のため、フォーカシング時にレンズ全長が変化せず、レンズの重心が安定しているため、ジンバル使用時や動画撮影においてバランスを崩しにくい設計です。
防塵防滴に配慮した設計も、プロフェッショナル用途や厳しい環境下での撮影を想定していることを示唆しています。屋外でのスポーツイベント、野生動物の撮影、あるいは悪天候下での使用においても、信頼性の高いパフォーマンスが期待できます。フィルター径は67mmと、F2.8の望遠ズームレンズとしては比較的扱いやすいサイズで、一般的なフィルター資産を活用しやすい点も利点です。
重量は約795gと、F2.8通しの望遠ズームレンズとしては軽量な部類に入ります。これにより、手持ち撮影での負担が軽減され、長時間の撮影や移動が多いシーンでも、高い機動性を維持できます。
得意な撮影シーン
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8は、そのスペックと機能性から、多様な撮影シーンで優れたパフォーマンスを発揮します。
- スポーツ撮影: F2.8の明るさは、暗い屋内競技場や曇天の屋外でも高速シャッター速度を維持し、決定的な瞬間を逃しません。STMによる高速・静粛なAFは、動きの速い被写体にも対応します。
- 野生動物: 180mmという望遠域は、警戒心の強い動物との距離を保ちつつ、その姿をクリアに捉えるのに適しています。防塵防滴設計は、自然環境下での使用に安心感を与えます。優れた近接撮影能力は、予期せぬ小さな被写体にも対応可能です。
- ポートレート: F2.8の開放F値と9枚羽根の円形絞りによる美しいボケ味は、人物を印象的に際立たせるポートレート撮影に最適です。70-180mmという焦点距離は、全身からバストアップまで、幅広い表現に対応します。
- イベント撮影: 屋内イベントやコンサートなど、光量が限られる場所でもF2.8の明るさが威力を発揮します。静粛なSTMは、静かな環境での撮影でも周囲に配慮できます。
- 低照度環境: 暗い場所での手持ち撮影や、夜景、星景の一部を切り取るようなシーンでも、F2.8がもたらす光量の多さは、ISO感度の上昇を抑え、よりクリアな画像を得るのに貢献します。
- 汎用的な望遠撮影: 風景の一部を切り取ったり、遠景の建築物や乗り物を撮影したりと、幅広い汎用的な望遠用途にも適しています。
バランスの取れた視点
本レンズは多くの利点を持つ一方で、いくつか考慮すべき点もあります。最も顕著なのは、レンズ内手ブレ補正機構(VR)を搭載していないことです。Zマウントのボディ内手ブレ補正(IBIS)に依存することになりますが、特に望遠域での手持ち撮影や動画撮影では、レンズ内VRが加わることで得られる恩恵が大きい場面も存在します。しかし、VR非搭載が軽量化とコストパフォーマンスに貢献している点は理解できます。
また、ニコンZレンズの「S-Line」のような最高峰の光学性能を追求したレンズと比較すると、微細な描写力や色収差の補正において、わずかな差を感じるかもしれません。しかし、これは絶対的な評価ではなく、その価格帯と重量を考慮すれば、提供される画質は非常に高い水準にあると言えます。
総合評価
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8は、ニコンZマウントシステムにおける「万能選手」と呼べる望遠ズームレンズです。F2.8の高速な開放F値、優れた近接撮影能力、軽量コンパクトな設計、そして防塵防滴性能を兼ね備え、多岐にわたる撮影シーンでユーザーのクリエイティブな表現を強力にサポートします。特に、一本で多くの用途をカバーしたいと考えるフォトグラファーや、機動性を重視するプロフェッショナルにとって、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。レンズ内VRがない点は考慮が必要ですが、その欠点を補って余りあるほどの汎用性とパフォーマンスを提供し、多くのZマウントユーザーにとって価値ある投資となるはずです。
